2023年7月30日、南越前町文化会館で演劇「もやしの唄」が上演されました。こんな劇でした。
時は、高度経済成長期。都市の郊外の小さなもやし屋『泉商店』の物語。主催は、越前市の「劇団AOITORI」、そして「南条おんにょろ倶楽部2023」とのコラボによる公演です。
越前市には、いくつもの劇団があります。私もかつては、演劇をしたことがあります。小学校区ごと開催している文化祭に町単位の青年団が演劇に取り組むのです。この演劇を作り出演したことがあります。町の青年団は、他町の青年団と合併して演劇に取り組みます。舞踊に取り組む町もあります。地区文化祭で審査され、優秀作品が市の大会に出場できます。さらに勝ち抜き県・国の大会に進みます。なんと、そのころは、台本も自分たちで書き上げていました。豊かな時間があり、文化があったのです。そんなころ、全国大会にも出場した青年団の演劇活動を背景に、劇団AOITORIは誕生しました。私にとっては、全国大会どころか、県の大会へのハードルは高く羨望でした。でありながら、とても親近感のある劇団です。
さて、小さなもやし屋『泉商店』主人の恵五郎は、6時間おきにもやしの水やりをしなければならず、寝不足でいつもうとうとしてしまいます。妹の十子は結婚を控えて新生活のことで頭がいっぱい。二浪の末、大学を卒業しようという弟の一彦も、就職活動や家の手伝いをよそにふらふらしてばかり。働き詰めの恵五郎を、亡き妻・静子の母であるとみと、近所のラーメン屋で働く九里子がなにかと助けています。
そんな泉家に、家出青年・村松が従業員として住み込むことに。育ちがよさそうなもやしっ子の村松に、慣れないもやし作りは重労働。さらに、度々やってくる子どものような喜助の対応にも戸惑う。そんなある日、恵五郎に再婚話が。お相手は妻の静子にそっくりで…。
高度経済成長期のまん中で、気の遠くなるような手間をかけながらもやしを作り続けた、ささやかな家族の物語。とても素敵な演技でとてもアマチュア劇団とは思えない演技力です。変わってほしい人の気持ちと、変わってほしくない世の中が面白く演出されていました。